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大阪高等裁判所 昭和62年(う)1028号 判決 1988年1月12日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人中藤幸太郎、同葛井重雄それぞれ作成の各控訴趣意書記載のとおりであるから、それぞれこれらを引用する。

各論旨は、それぞれ原判決の量刑不当を主張し、刑の執行を猶予するのが相当である、というのであるが、各所論にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌して検討するのに、本件は、被告人が法定の除外事由がないのに、内妻方居室において、回転弾倉式けん銃等けん銃三丁、自動装填式猟銃一丁、刃渡り約四三・九センチメートルの日本刀一振、及び火薬類である実包五七発を所持していたという事案であって、その罪質、動機、態様、前科、被告人の生活態度、殊にその動機がいずれも護身用及びけんか道具として、回転弾倉式けん銃一丁及び実包五発、箱型銃(通称「ベトコン銃」)一丁及び実包五発、仕込杖銃一丁及び実包二発は、昭和六〇年四月ころに、暴力団甲野一家総長代行Aを介し通称「やっさん」から、自動装填式猟銃一丁及び実包四五発は、同六一年一一月二七日ころ乙山組の舎弟Bから、また日本刀一振は京都の骨とう屋から、それぞれ買い受けた上、他の多数の模造刀などと共に内妻方に隠匿所持していたもので、所持の動機には危険性を伴っている上、その数量も多いこと、被告人には昭和四五年ころから主として粗暴犯による罰金刑三回、執行猶予付懲役刑二回の前科があり、本件犯行中の前記通称「やっさん」から購入したけん銃三丁及び実包一二発は、右最終の前科である昭和五六年二月一八日恐喝・暴行の各罪により懲役一〇月、五年間執行猶予に処せられた前科(同年三月五日確定)の執行猶予期間中に入手したものであること、被告人は昭和四九年ころ住吉連合会系丙川会という暴力団を組織したが、前刑裁判中の昭和五五年ころ右丙川会の解散届を出したものの、その後間もなく暴力団住吉連合会系丁原組を組織し、その組長であったこと(なお、中藤弁護人の所論中、被告人の司法警察員に対する供述調書中、けん銃所持の目的に関する供述記載部分の信用性を否定する主張は右供述のなされた経過、内容などに徴し、採用し難く、この点に関する被告人の原審及び当審各公判における骨とう品収集癖が主因であるとの各供述は措信し難い。また、葛井弁護人は、本件回転弾倉式けん銃は、ライフル(旋条)が不充分である粗製けん銃であり、箱型銃及び仕込杖銃は共にライフルがなく、けん銃としては玩具同然である旨るる主張するが、技術吏員作成の昭和六二年二月一〇日付鑑定書によれば、右各けん銃はいずれも殺傷能力のあるものであることが認められるから、右所論は採用し難い。)、その他記録に表れた諸般の事情を考慮すると、被告人の刑責は軽視できず、反省し正業に就く決意を固めていること、現実に暴力団と抗争事件を起こしたことがないこと、二回にわたる各五年間の執行猶予付懲役刑については、いずれも執行猶予を取り消されることなく経過したこと、原判決後、河内長野市に福祉基金として五〇万円を寄贈したことなど、各所論指摘の諸点をしんしゃくしても、原判決の量刑が不当に重過ぎるとは考えられない。各論旨は理由がない。

なお、葛井弁護人は、原判決が、原判示の猟銃所持の事実について、これをけん銃所持の事実との包括一罪であるとして、けん銃所持の罰条である銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第一号に問擬した点について、猟銃の所持については、同法三一条の三第一号に特別の規定が存するのであるから、けん銃の所持とは別にして、同条に問擬すべきであり、原判決の法令の適用は誤っている、との旨の主張をしている。

そこで、案ずるに、原判決が、原判示の所為のうち、けん銃三丁及び猟銃一丁の所持は包括して同法三一条の二第一号、三条一項に該当するものとし、これと日本刀一振の所持及び実包五七発の所持とは刑法五四条一項前段の観念的競合の関係に立つものとして、同法一〇条により最も重い銃砲不法所持罪の刑で処断していることは原判文に徴し明らかである。

ところで、銃砲刀剣類所持等取締法は、第三条において銃砲・刀剣類の所持を禁止する旨の規定を設け、銃砲のうち、けん銃を所持した者については、同法三一条の二第一号において、一〇年以下の懲役又は一〇〇万円以下の罰金に処する旨を、猟銃を所持した者については、同法三一条の三第一号において、五年以下の懲役又は五〇万円以下の罰金に処する旨を規定しており、けん銃の所持と猟銃の所持につき処罰規定を異にし、かつ、法定刑も異にしている上、本件においては、検察官においても、猟銃所持の事実につき、その罰条として、同法三条一項、三一条の三第一号を挙げていたのであるから、たとえそれらが一個の所持と認められる場合であっても、両者を包括して重いけん銃所持の一罪として処罰することは許されず、両者は観念的競合の関係に立つものと解すべきである。原判決は、けん銃の所持と猟銃の所持とを包括一罪とする反面において、これと日本刀一振の所持との関係については、観念的競合としているが、これを別個に解すべき事由は見出し難く、原判決の法令の適用は首尾一貫しないものというべきである。

以上に説示のとおり、原判決には叙上の点において法令の適用を誤った違法があるが、結局、重いけん銃所持の罪で処断することになるので、右誤りは判決に影響を及ぼすものではない、というべきである。

よって、刑事訴訟法三九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 尾鼻輝次 裁判官 岡次郎 木村幸男)

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